「費用一切お構いなし」

日光東照宮造営は、幕府作事方大棟梁の甲良宗広が総指揮にあたった
造営にあたって、宗広が時の老中、土井正勝に「費用はいかほどか」と尋ねたところ、
正勝は「上様には、費用一切お構いなし」とのことであると答えたという。


「費用一切お構いなし」というのは、いい言葉だ。
必要なら、いくらお金をかけてもいいよと、トップが決断しているわけである。
大企業では、費用対効果を考えるので、予算が明確でないということはありえないだろうが、
中小企業では、ときどき、こういう案件にお目にかかることがある。
「IT投資プロジェクについては、私は判断できないので、費用、内容一切お任せます」
などと、社長が言うわけである。
プロジェクトマネジメントを支援する立場としては、ありがたい話であるが、
失敗した時に、費用をケチッたからだという言い訳が通用しなくなるので、責任は重大である。


家光は竣工後、総費用が56万8千両かかったと聞き、
「百万両はかかるかと思ったが、思いのほか要らなかったな」と答えたそうだ。